梅とは:桜との違い
梅はアンズに近いバラ科の木で、日本では花だけでなく、梅干しや梅酒になる実のためにも育てられてきました。桜との見分け方をおさらいしておきましょう。梅の花びらは先が丸く切れ込みがなく、花柄がほとんどないので、花が枝にじかに付いているように見え、桜のように房になって垂れることはありません。色は白梅から淡いピンク、濃い紅梅まであり、噴水のように枝を垂らす枝垂れ梅もあります。
観梅は桜の花見より古い習慣です。花を愛でる文化が中国から伝わった奈良時代、花見といえば梅のことで、万葉集には桜よりはるかに多くの梅の歌があり、元号「令和」もその梅花の歌の序文から取られました。梅は学問の神・天神さまとしてまつられる菅原道真が愛した花でもあり、天満宮の梅園は合格祈願の受験生でにぎわいます。
都心の天神さまと庭園
千代田線湯島駅3番出口から徒歩2分の湯島天神(湯島天満宮)は、都心の梅の定番です。こぢんまりした境内に約300本、その大半が白梅。2月上旬から3月上旬まで「文京梅まつり」が開かれ、週末には奉納演芸や野点、各地の物産展が出ます。古木が多く花付きが落ちてきたため、近年は植え替えが進められています。境内は無料です。
江東区の亀戸天神社は亀戸駅から徒歩15分ほど。心字池と太鼓橋のまわりに紅白300本以上の梅が咲き、背後には東京スカイツリー。2月には無料の梅まつりも開かれます。亀戸は江戸の梅の名所で、近くの梅屋敷にあった「臥龍梅」は広重が描き、のちにゴッホが模写しました。梅屋敷は1910年の大水害で失われています。
東京ドームの隣にある小石川後楽園は水戸徳川家の大名庭園で、約45品種、約150本の梅林が落ち着いた雰囲気です。梅の時期には紙切りの公演や茶会、庭園ガイドなどの催しが例年開かれます。入園料は一般300円です(2026年現在)。
東京各地の梅の公園と庭園
世田谷区の羽根木公園は小田急線梅ヶ丘駅から徒歩5分ほど。ゆるやかな丘に約60品種、紅白あわせて約650本の梅が咲きます。2月上旬から3月はじめの「せたがや梅まつり」では、週末に屋台や餅つき、抹茶の呈茶などがあります。入園無料で、週末の昼どきは混み合います。
大田区の池上梅園は、日本画家・伊東深水の自宅があった丘の斜面につくられた庭園で、紅梅を中心に30品種あまりが池や茶室のまわりに咲きます。都営浅草線西馬込駅から徒歩10分。2月と3月は休園日がなく、近年は夜のライトアップも行われています。入園料は少額で、隣の丘の池上本門寺とあわせて歩くのがおすすめです。
多摩方面では、府中市郷土の森博物館に約1,100本という都内有数の梅園があり、1月下旬から3月上旬に梅まつりが開かれます(入場料300円、2026年現在。分倍河原駅からバス)。日野市の京王百草園は約500本が咲く丘の上の庭園で、京王線百草園駅から急な坂を10分ほど上ります。神代植物公園の梅園は、深大寺そばとあわせて楽しめます。
青梅:よみがえる梅の里
東京西部の山あいにある青梅の吉野梅郷は、数万本の梅が咲く関東屈指の梅の里でした。ところが2009年、国内で初めてウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス)が見つかり、拡大を防ぐために地域の梅の多くが伐採され、2014年には市の梅の公園でもすべての木が伐られました。
再植樹は2016年に始まり、以前より間隔を広くとった約1,200本の若木が斜面を覆っています。2026年で10年目。昔の景色にはまだ及びませんが、斜面はふたたび紅白に彩られ、「吉野梅郷梅まつり」も戻ってきました。地酒や梅酒の催し、週末のグルメマルシェ、3月上旬には駅近くで甲冑行列が出る観梅市民まつりがあります。
青梅は都心より寒く、見頃はたいてい3月上旬から中旬です。梅の公園はJR青梅線日向和田駅から徒歩15分ほどで、新宿からは青梅か立川で乗り換えて1時間半ほど。近年は入園無料です。
日帰りで:水戸・小田原・湯河原・熱海
茨城県水戸市の偕楽園は日本三名園のひとつで、小石川後楽園と同じ水戸徳川家の徳川斉昭が1842年に開きました。約100品種3,000本の梅が冬から3月下旬まで咲き継ぎ、「水戸の梅まつり」は2月中旬から3月下旬まで続きます。まつり期間中の入園料は一般500円(2026年現在)で、早朝の無料開放はありません。上野から特急で約75分。まつり期間の週末や見頃の時期には、下り列車だけが停まる臨時の偕楽園駅が日中に開設され、それ以外は水戸駅からバスです。本園にペットは入れません。
小田原の曽我梅林は、JR御殿場線下曽我駅(国府津で乗り換え)の周辺に広がる農業地帯で、約3万5千本の梅の多くは梅干し用の木です。晴れた日は白い梅林の向こうに富士山が見えます。梅林は私有地なので、農道から観賞しましょう。「小田原梅まつり」は2月上旬から3月上旬に、ここと小田原城址公園で開かれます。
湯河原温泉の奥にある幕山公園では山の斜面に約4,000本の梅が咲き、2月から3月上旬に「梅の宴」が開かれます。期間中は湯河原駅から臨時バスが出て、入園料は2026年から300円に上がりました。来宮駅から徒歩10分ほどの熱海梅園は日本でもっとも早く咲く梅園のひとつで、11月下旬から12月に最初の花が開き、梅まつりは1月上旬に始まります。どちらも温泉とあわせてどうぞ。
見頃・天気・まつりの楽しみ
都心では1月に早咲きが咲き始め、2月中旬から3月上旬が見頃のピーク、遅咲きは3月中旬まで残るので、多くの庭園では1か月ほど何かしら咲いています。青梅や水戸は遅め、熱海や湯河原は早め。公園や神社が「咲き始め」「見頃」「散り始め」といった開花情報を出しているので、遠出の前に確認しましょう。
梅の季節はまだ冬です。2月は雪の日もあり、2026年の文京梅まつりでは初日のまち歩きが雪で中止になりました。人出は桜の季節ほどではありませんが、湯島天神や羽根木公園、偕楽園は晴れた週末の午後に混み合います。平日の朝は落ち着いていて、風のない穏やかな日ほど香りがよく感じられます。
まつりの屋台では甘酒が定番で、梅干しや梅酒、梅のお菓子も並び、神社の屋台は現金のみのことが多いです。
- 多くの庭園では、狭い園路での三脚の使用が制限されています。入口の掲示を確認しましょう。
- 梅林は土の地面が多く、霜が解けるとぬかるみます。汚れてもいい靴で出かけましょう。