ゲンジボタルとヘイケボタル
日本には約50種のホタルがいますが、観賞の主役は二種類です。ゲンジボタルは国内最大で体長2cmほどになり、ゆっくりと明るく光りながらふわふわ飛びます。東日本では約4秒に1回と西日本よりゆっくり明滅し、気温が高い夜ほど間隔が短くなります。幼虫はきれいな流れに棲み、カワニナという小さな巻貝を食べるので、ゲンジボタルには清流が欠かせません。小さめのヘイケボタルはチカチカと速く光り、低くまっすぐ飛び、田んぼや池、水路のまわりに棲みます。
東京周辺では、ゲンジボタルは5月中旬から下旬に飛び始めて6月下旬まで、ピークはたいてい6月上旬から中旬です。ヘイケボタルは少し遅れて現れ、7月まで見られます。成虫の命は1〜2週間ほどで、水しか口にせず、光はオスとメスが出会うための合図です。都市近郊の観賞地の多くは、幼虫を育てて冬や春に水辺へ放流することでホタルを守っています。観賞地はどこも、地域の地道な保護活動に支えられています。
ホテル椿山荘東京:都心のホタル
文京区のホテル椿山荘東京の庭園では、1954年から「ほたるの夕べ」が続いています。創業者が戦後の東京の子どもたちにホタルを見せたいと願ったのが始まりです。湧水が流れる沢でゲンジボタルを育てて毎年冬に幼虫を放流しており、例年5月中旬に飛び始め、見頃は6月上旬。赤い弁慶橋の下の「ほたる沢」、湧水の「古香井」、水車のまわりがおすすめです。6月下旬から7月上旬と雨の日は、館内の「ほたるの洞窟」のビオトープで観賞できます。
ホタルの時期の夜は、入場に条件があります。庭園はふだんホテル利用者のための場所で、2026年のホタルの時期は、18時30分以降の入場が宿泊・宴席の利用者、レストランやショップで大人3,000円以上、子ども1,500円以上を利用した人(1人1枚の入場券を進呈)、WEBで事前購入した庭園入場券(日時と枚数限定)を持つ人に限られました。指定日にはほたるの夕べのディナービュッフェもあります。翌年以降も同様のしくみが予想されるので、早めの予約を。
ホタルがよく見えるのは19時30分以降。フラッシュ撮影と三脚は禁止で、期間中は観賞エリアでの「東京雲海」の霧も止められます。有楽町線江戸川橋駅1a出口から上り坂を徒歩10分ほど。冠木門は閉門しているので、神田川側の通用口を利用します。
23区内のホタル観賞会
足立区生物園は、40年以上ホタルを育ててきた小さな生き物の園です。5月下旬の数日間の「ホタルの夕べ」では、屋外の昆虫ドームを歩くあいだ、数百匹のゲンジボタルがすぐそばを飛び交います。定員があり事前申込制で、2026年は大人700円でした。竹ノ塚駅東口から徒歩約20分、またはバスで保木間仲通り下車です。
7月上旬には、江戸時代の代官屋敷が残る世田谷代官屋敷とその周辺で「せたがやホタル祭りとサギ草市」が開かれます。白鷺が舞うような花を咲かせるサギソウの市も並びます。入場無料で、ホタル観賞は17時から、観賞の列の受付は20時45分ごろまで。東急世田谷線上町駅から徒歩4分です。
多摩:福生・稲城・八王子と野生のホタル
JR青梅線の福生では、5月末か6月はじめの1日だけ「福生ほたる祭」が開かれます。会場は玉川上水に近いほたる公園前のせせらぎ通り一帯で、地元の研究会が育てたゲンジボタルが日没後の小川を舞い、昼からはキッチンカーや舞台の催しもあります。祭り当日、ほたる公園での観賞には整理券が必要なので早めに。混雑緩和のため、主催者は牛浜駅の利用をすすめています(会場まで徒歩10分ほど)。ほたる公園周辺に駐車場はなく、当日は学校の校庭2か所が臨時駐車場になりますが、台数に限りがあります。
稲城市の、よみうりランドに隣接する花の庭園HANA・BIYORIでは、5月下旬から7月はじめごろまで「ほたるびより」が開かれ、6月中旬まではゲンジボタル、その後はヘイケボタルが見られます。入園料に加えてWEBで買う日時指定の観賞チケットが必要で(2026年は観賞券400円、大人の入園料800円)、観賞は19時40分ごろから。最寄りは京王よみうりランド駅です。
八王子の山あいにある夕やけ小やけふれあいの里では、6月の2週間ほど「ホタルの夕べ」が開かれ、北浅川沿いでゲンジボタルとヘイケボタルの両方が見られます(大人200円、2026年現在)。高尾駅北口から西東京バスで約30分なので、帰りの最終バスを事前に確認しておきましょう。イベントのない野生のホタルなら、6月にあきる野市の徳雲院から養沢川沿いを歩くのが地元の定番です。野生の観賞地には明かりもトイレも係員もなく、日によっては数匹しか見られないこともあります。
足をのばして:湯河原と埼玉
神奈川県の湯河原温泉では、5月下旬から6月上旬の10日ほど、万葉公園で「湯河原ほたるの宴」が開かれます。時間は19時30分から21時。毎年3月に地元の小学生が幼虫を放流したホタルを、細い谷あいの沢沿いで観賞します。入場無料で、園内は足元灯だけの暗さ、フラッシュは禁止です。駐車場はわずかなので、湯河原駅からバスで向かいましょう(落合橋まで約9分)。温泉に泊まり、ひと風呂浴びてから出かけるのがいちばんです。
埼玉県狭山市の智光山公園では、6月中旬の2夜、自然観察園で「ホタル観察会」が開かれます。WEBでの事前予約制で各日600人ほど(2026年は500円)、2026年は受付開始から1週間で定員に達したので、5月の告知を見逃さないように。西武新宿線狭山市駅からバスが出ています。
ホタル観賞のコツとマナー
ホタルが光りはじめるのは、しっかり暗くなる日没30分後ごろから。ゲンジボタルがよく飛ぶのは20時から21時30分ごろで、22時を過ぎると落ち着きます。よく飛ぶのは、蒸し暑く風のない夜で、曇りや新月のころならなおよし。日中に雨が降った後の蒸した夜はねらい目で、寒い夜や風の強い夜、明るい満月の夜はほとんど飛ばないこともあります。どの観賞地も見頃は1週間ほどなので、1週間遅れの週末より、見頃の平日に行くほうが確実です。
いちばん気をつけたいのは光です。フラッシュは切り、スマートフォンの画面は暗くしてポケットへ。懐中電灯は使わず、歩くのに必要なときは足元だけを照らしましょう。園路から外れず、静かに話し、ホタルを捕まえたり持ち帰ったりしないこと。水辺での虫よけスプレーはホタルによくないので、長袖で対策を。撮影には長時間露光が必要ですが、椿山荘のように三脚が禁止の場所もあります。
- 出かける前に終電や最終バスを確認しましょう。山あいの観賞地は21時を過ぎると一気に人がいなくなります。
- 小雨なら開催されることもありますが、強い雨や風の日はホタルが飛びません。当日に主催者の情報を確認しましょう。