どんな街か
両国は隅田川の東岸、墨田区にあり、秋葉原から電車ですぐの場所です。地名は両国橋に由来し、武蔵国と下総国の二つの国を結ぶ橋だったことから俗に両国橋と呼ばれ、1693年に正式な名前になりました。江戸時代には駅の南にある回向院で勧進相撲が開かれるようになり、これが相撲の街としての始まりです。ふだんはオフィスと住宅、小さな商店が混じる落ち着いた街ですが、本場所の時期は国技館への道に力士の名前入りののぼりが並び、浴衣姿の力士が駅前を歩き、街はまったく違う表情を見せます。
JR両国駅西口に直結する旧駅舎は、現在「江戸NOREN」という飲食施設です。江戸の町屋を思わせる吹き抜けの中央に原寸大の土俵があり、ちゃんこ、そば、寿司、もんじゃなどの店と両国観光案内所が入っています。夜まで営業しているので、両国歩きの最初に立ち寄るのに便利です。
国技館の本場所と相撲部屋
JR駅のすぐ北、緑の屋根が目印の両国国技館では、1月、5月、9月にそれぞれ15日間の本場所が開かれます。チケットは公式の「チケット大相撲」で場所の約5週間前から販売され、近年の東京場所は完売が続いているので、当日券を当てにするのはおすすめしません。場所のない時期にはコンサートなどのイベントにも使われ、下の一覧にも載ります。館内の相撲博物館は入館無料で、場所のない時期は平日のみ開館、本場所中はその日の観戦券が必要です。
数十ある相撲部屋の多くは、両国、清澄、森下あたりの歩ける範囲にあります。朝稽古は早朝に始まり、たいてい昼前には終わりますが、あくまで力士の仕事場で見世物ではありません。見学のルールは部屋ごとに異なり、よく変わります。一般の見学を受け付けなくなった部屋もあれば、ツアー会社経由の少人数見学だけを受け入れる部屋もあり、予約なしで訪ねてもまず入れません。見学できた場合は、指示された場所に座って静かにし、撮影は許可があるときだけにしましょう。
- 場所中の朝は駅の近くで力士とすれ違うことがあります。軽く会釈する程度にして、追いかけての撮影は控えましょう。
- 朝稽古のツアーは、部屋の名前と見学ルールを事前に明示している会社を選ぶと安心です。
- チケットがなくても、本場所中は毎日午後にNHKで幕内の取組が生中継されます。
博物館と旧安田庭園
国技館の隣にある高床式の巨大な建物が江戸東京博物館です。長期の改修を終え、2026年3月31日にリニューアルオープンしました。常設展示は2フロアにわたる「江戸ゾーン」と「東京ゾーン」で、入口では実物大で復元された日本橋の一部が迎えてくれ、町並みや暮らしを再現した精巧な模型が続きます。見て回るなら2時間以上みておくと安心です。月曜休館(祝日の場合は翌平日)で、土曜日は閉館時間が遅くなります。
すみだ北斎美術館は2016年に開館した、妹島和世さん設計の銀色の建物です。葛飾北斎は1760年にこの近くで生まれ、生涯の大半を墨田で過ごしました。浮世絵や肉筆画を企画展で入れ替えながら紹介しているので、訪れる時期によって展示が変わります。月曜休館で、ひと通り見るには1時間ほどかかります。
駅から北へ数分の旧安田庭園は、元禄年間に大名屋敷の庭として造られたと伝わる回遊式庭園です。かつては隅田川の水を引き、潮の満ち引きで池の水位と景色が変わる潮入りの庭でしたが、現在はポンプで潮入りを再現しています。日没後は閉園までライトアップされ、博物館めぐりの合間の休憩にぴったりです。隣には刀剣博物館があり、こちらも月曜休館です。
- 近年は11月下旬から12月下旬にかけて、旧安田庭園で開園時間を延長した夜のライトアップイベントが開かれています。
ちゃんこ、隅田川、両国の一年
ちゃんこ鍋は力士が体をつくるために食べる鍋料理で、鶏や魚、野菜、豆腐をたっぷり煮込み、最後は残ったスープでご飯や麺をいただきます。両国はちゃんこ店が多いことで知られ、元力士が営む店も少なくありません。本場所中は国技館の地下でも観客向けにちゃんこが販売されます。寒い季節がいちばんおいしく、1月場所の時期にはぴったりです。
両国のもう一つの顔が隅田川です。隅田川花火大会の起源は、1733年に飢饉や疫病の犠牲者を弔うため両国橋のあたりで花火を上げた「両国の川開き」とされています。1961年までは両国橋の上流で打ち上げられていましたが、1978年に今の名前で復活してからは、さらに上流の2か所の会場で、例年7月の最終土曜日に開かれています。両国駅は第二会場の最寄り駅の一つで、当日はかなり混雑します。
一年の流れはシンプルで、1月、5月、9月の本場所、7月下旬の花火大会、そして数か月ごとに変わる江戸東京博物館と北斎美術館の展覧会が軸になります。
- 場所中は国技館周辺の飲食店が昼どきと打ち出し直後に混みやすいので、時間を少しずらすのがおすすめです。
- 花火大会の日は、帰りのルートを決めてから出かけましょう。終了後は川沿いの駅で入場規制がかかることが多いです。
アクセスと周辺
JR両国駅は総武線各駅停車の駅で、新宿や秋葉原から乗り換えなしで来られます。国技館は西口を出てすぐ、江戸東京博物館は西口から徒歩3分ほどです。都営大江戸線の両国駅はJRとは別の駅で、数分東にあります。A3・A4出口を出ると江戸東京博物館の目の前で、すみだ北斎美術館へはA3出口から徒歩5分ほど(JR東口からは9分ほど)です。
周辺の街と組み合わせるのもおすすめです。秋葉原はJRで2駅、浅草や東京スカイツリーへも近く、大江戸線で2駅南の清澄白河まで行けば清澄庭園や深川のコーヒーの街を歩けます。午前は博物館、昼はちゃんこ、午後は庭園、夕方は隅田川沿いを散歩、という一日も組めます。