帝釈天と寅さんの町
柴又帝釈天の正式名は経栄山題経寺で、寛永6年(1629年)創建の日蓮宗の寺です。日蓮自らが刻んだと伝わる帝釈天の板本尊を祀ることから「帝釈天」の名で親しまれています。寺によると、一時行方がわからなくなっていた板本尊が安永8年(1779年)の春、本堂の修理中に見つかり、その日が庚申だったことから庚申の日が縁日になりました。
柴又の名を全国に広めたのは映画です。山田洋次監督の『男はつらいよ』は1969年に始まり、渥美清演じる寅さんが旅先からこの参道の実家のだんご屋に帰ってくる物語として48作が作られ、2019年には第1作から50年を記念した新作も公開されました。2018年、柴又は寺と参道と川が一体となった景観が評価され、都内で初めて国の重要文化的景観に選ばれています。
見どころ
京成柴又駅前には、トランクを提げた寅さんと見送るさくらの像があります。そこから帝釈天まで数分の参道には、戦災を免れた老舗も多く、草だんご、飴、佃煮、うなぎの店が並びます。だんご屋のひとつは、映画の寅さんの実家のモデルとして知られています。
二天門は明治29年(1896年)の建築で、全面に彫刻が施されています。帝釈堂の内殿外壁には、法華経の説話を題材にした10枚の大きな胴羽目彫刻があり、大正末から昭和初期にかけて10年以上かけて彫られました。現在は「彫刻ギャラリー」として囲われて保護されていて、回廊から眺める庭園「邃渓園」と共通の拝観券で見学できます。帝釈堂の前には枝を低く広げた「瑞龍の松」があり、東京都の天然記念物です。
寺の先には、庭園を眺めながら抹茶を楽しめる大正期の邸宅「山本亭」と、撮影で使われたくるまやのセットや小道具、寅さんのトランクを展示する「葛飾柴又寅さん記念館」があります。隣の山田洋次ミュージアムとは共通券です。2026年には、200年以上続いた川魚料理の老舗「川甚」の建物が「柴又川甚まちなみ館」として生まれ変わり、カフェや売店、展示が入りました。
- 彫刻ギャラリーと邃渓園の受付は16時ごろまでで、境内よりかなり早く終わります。拝観料は現金を用意しましょう。
- 草だんごはできたてがいちばん。参道でつまんで、帰りに折り詰めを買うのがおすすめです。
柴又の一年
60日ごと、年に6回ほどめぐる庚申の日が帝釈天の縁日です。この日は板本尊が開帳され、一日を通して御経頂戴が行われます。この日だけの御朱印もあり、参道もいつも以上に賑わいます。次の日程は寺の公式サイトに載っています。正月は初詣客で大混雑し、節分の日(2月3日ごろ)は節分会、4月上旬にはお釈迦様の誕生を祝う花まつりで稚児行列があります。
7月下旬には柴又の江戸川河川敷で「葛飾納涼花火大会」が開かれ、都内東部を代表する夏の花火です。河川敷は早くから埋まり、夕方からは周辺で交通規制があります。秋には映画のロケ地となった各地が名物を持ち寄る「寅さんサミット」が柴又で開かれ、11月中旬には日蓮の忌日法要であるお会式があります。
時間帯・混雑・マナー
境内は早朝から夜まで開いていますが、帝釈堂はそれより早く閉まり、彫刻ギャラリーと邃渓園の受付は16時ごろまでです。静かなのは平日の午前中、混むのは週末の午後と庚申の日です。参道の店の多くは夕方早めに閉まります。柴又はこぢんまりしているので、寺と参道、記念館、渡し船まで半日で回れます。
帝釈天は今も信仰の場です。門で一礼し、手水舎で手を清め、堂内では静かにしましょう。寅さん記念館と山田洋次ミュージアムの休館日は毎月第3火曜日(祝日の場合は直後の平日)と12月の第3火・水・木曜日で、年末年始は開館しています。
- 小銭と千円札を持っていくと便利です。だんご屋や渡し船は現金が確実です。
- 矢切の渡しは3月中旬から11月までは毎日、冬は土日祝を中心に運航します。
アクセスと矢切の渡し、周辺
柴又駅は京成金町線の駅で、京成上野からの電車や都営浅草線直通の電車が停まる京成高砂駅から1駅、JR常磐線の金町駅に隣接する京成金町駅からも1駅です。北総線の新柴又駅からは徒歩約12分、金町駅と小岩駅を結ぶバスなら「柴又帝釈天」で降ります。
帝釈天から山本亭の脇を抜けて江戸川の土手に出ると、千葉県松戸市へ渡る「矢切の渡し」の乗り場があります。江戸を守るため川に橋を架けることが許されなかった江戸時代、対岸に田畑を持つ農民のために認められた渡しが始まりで、今では江戸川に残る唯一の渡し船です。小さな船を船頭が手で漕ぎ、時刻表はなく、ある程度人が集まったら出航します。荒天や増水の日は運休です。対岸は伊藤左千夫の小説『野菊の墓』の舞台です。
金町からJR常磐線で1駅の亀有には、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の銅像が点在しています。京成線と都営浅草線を使えば、浅草も同じ日に回りやすいです。