浴衣と着物の違い、着る季節
浴衣は裏地のない木綿の夏の着物です。長襦袢を重ねず、素足に下駄を合わせ、帯も簡単な結び方で着られます。そのためお祭りや花火大会、七夕など、おおむね6月下旬から8月末までの夏の装いです。裏地のある着物は足袋をはいて重ねて着るもので、初詣や成人式、結婚式、七五三などで見かけます。
ひとつ注意を。旅館やホテルの部屋着も浴衣と呼びますが、あれは館内や温泉街で着るものです。宿の浴衣で花火大会の電車に乗るのはやめておきましょう。
レンタルか、買うか
初めてならレンタルが一番楽です。浅草には着物・浴衣のレンタル店が多く、原宿などの観光地にもあります。一般的なプランは浴衣、帯、下駄、小さなバッグ込みで、着付けをしてもらえ、追加料金でヘアセットも頼めます。大きな花火大会の週末は早めに予約し、返却時間も確認しておきましょう。花火の終了が閉店後になることもあり、翌日返却ができる店もあります。
ホテルに一式を届けてくれて返送用の袋も付いた宅配レンタルもあり、自分で着られる人には便利です。買うのも意外と安く、春の終わりごろから百貨店や商業施設、大手の衣料チェーンで浴衣・帯・下駄のセットが並び、リサイクル着物店では手ごろな浴衣が見つかります。
- 背が高い人や肩幅が広い人は、予約時に伝えておきましょう。長いサイズは数が限られています。
- 夜の途中で帯がゆるんだときのために、結び直し方を店で教えてもらうと安心です。
着方:右前と帯
これだけは覚えておきたいのが右前です。先に右側の身ごろを体に沿わせ、その上に左側を重ねるので、自分から見て左の衿が上になり、右手が懐にすっと入る形です。逆の左前は亡くなった人に着せる合わせ方なので、これだけは間違えないようにしましょう。男女とも同じです。
女性の浴衣は身長より長く、余った分を腰で折り上げておはしょりを作り、紐で留めてから、幅の広い帯をウエストの高めの位置に締めます。後ろで蝶結びにするのが定番です。男性はおはしょりを作らずくるぶし丈で着て、角帯ややわらかい兵児帯を腰骨のあたりに低めに締めます。女性は衿を少し後ろに抜くと浴衣らしくなります。
子どもは兵児帯で結ぶ小さな浴衣のほか、甚平もよく着ます。紐で結ぶ上着と半ズボンの上下で、涼しくて動きやすく、大人の男性が気軽に着るのにもおすすめです。
- 浴衣の下には薄い肌着やペチコートを。汗で湿った木綿は、明るい照明の下で透けることがあります。
- 出かける前に鏡で右前かどうかを一度だけ確認しましょう。
下駄の靴ずれと持ち物
楽しい夜が早めに終わる原因の多くは、新しい下駄の靴ずれです。鼻緒が指の間にこすれ、何時間も立ったり歩いたりすることになります。出かける前に鼻緒を手で軽くもんでやわらかくし、家で少し履き慣らし、痛くなる前に指の間へ絆創膏を貼っておきましょう。帰り道用にぺたんこのサンダルをバッグに入れておく人も多いです。
浴衣にはポケットがないので、女性は巾着やかごバッグを持つのが一般的です。男性は薄い財布を帯や袂に入れておくことが多いです。扇子やうちわは実用的で見た目にも合い、うちわはお祭りで無料で配られることもよくあります。髪はまとめてうなじを見せるのが定番で、シンプルなかんざしやヘアピンで十分です。
- 巾着には絆創膏、ティッシュ、ウェットティッシュ、ハンカチ、小銭を。交通系ICカードはすぐ出せる場所に。
- 下駄は硬い床で音が響き、濡れた石畳では滑ります。歩幅を小さくしましょう。
暑さ、雨、トイレ、外国から来た人の浴衣
浴衣はジーンズよりは涼しいものの、東京の夏の夜は蒸し暑いので、こまめに水分をとり日陰で休みましょう。雨の予報なら、濡れてもいいと思えるときだけ浴衣で。木綿ははねでしみになりやすく、下駄は滑ります。着替える前に、イベントが雨天中止かどうかを確認しておくと安心です。
トイレは思ったより簡単です。洋式なら前身ごろを裾からまとめて袖と一緒に持ち上げ、胸元で押さえるか、裾を少しの間帯にはさみます。花火大会のトイレは大行列になるので、混む前に済ませておきましょう。
海外から来た人の浴衣姿は東京では歓迎されますし、完璧である必要もありません。右前で着て帯をまっすぐにし、レンタルの浴衣で汚れた地面に座らない、といった日本人と同じ気づかいがあれば十分です。年配の人が衿や帯を直してくれたら、親切として受け取ってください。